2017/09/20

今日の言葉

さあ、切符をしっかり持っておいで。
お前はもう夢の鉄道の中でなしに
本当の世界の火やはげしい波の中を
大股(おおまた)にまっすぐに歩いて行かなければいけない。
天の川のなかでたった一つのほんたうのその切符を
決しておまへはなくしていけない。


――― 宮沢賢治
    (「銀河鉄道の夜」第三次稿)







2017/09/18

今日の言葉

「正遍知はあしたの朝の七時ごろヒームキャの河をおわたりになってこの町に入らっしゃるそうだ。」
 みんなは思ひました、正遍知はどんなお顔いろでそのお眼はどんなだらう、噂(うはさ)の通り紺いろの蓮華(れんげ)のはなびらのやうな瞳(ひとみ)をしてゐなさるだらうか、お指の爪(つめ)やほんたうに赤銅いろに光るだらうか、また町から行った人たちが正遍知とどんなことを云ひどんななりをしてゐるだらう、もうみんなはまるで子供のやうにいそいそして、まづ自分の家をきちんとととのへそれから表へ出て通りをきれいに掃除しました。



――― 宮沢賢治  (「四又の百合」より)







2017/09/16

今日の言葉

正しく清くはたらくひとはひとつの大きな芸術を時間のうしろにつくるのです。


ごらんなさい。向ふの青いそらのなかを一羽の鵠(こふ)がとんで行きます。鳥はうしろにみなそのあとをもつのです。
みんなはそれを見ないでせうが、わたくしはそれを見るのです。

おんなじやうにわたくしどもはみなそのあとにひとつの世界をつくって来ます。それがあらゆる人々のいちばん高い芸術です。




     ―――― 宮沢賢治作 童話「マリヴロンと少女」より






2017/09/14

『人類の最大犯罪は戦争』より

 核兵器とは、人間が地上に創り出した悪魔の火、地獄の火です。これを傍観する人も、私に云わせると、悪魔か地獄の使者です。いま地上には、これを傍観する親達、若者達が余りに多すぎます。この太平に酔いしれた世界とは、実は悪魔の住家、あるいは地獄そのものではないでしょうか。 

 だが、その傍観は、単に不人情のためだけではないようです。絶望なのです。たとえば、いくら反核・軍縮と叫んでも、米ソは核軍拡競争を止めない。日本の軍拡反対を叫んでも、政府は勝手にどんどん軍拡路線を進めていってしまう、この絶望です。

 然し、その絶望は間違っています。今は、人類史上唯一度の、最大の平和のチャンスの時代です。何故でしょうか………。仏教では、「地獄の隣りは極楽」と言います。すると、今は地獄の季節ですから、今は極楽のすぐ隣りの季節という事です。つまり、仏教では、凡夫は六道を輪廻すると云います。六道とは、一番下が地獄、その上が餓鬼道、その上が畜生道、そして修羅道、人間道、天上道と、六つの世界をぐるぐる経めぐって迷い続けると云います。すると、地獄の上は餓鬼道ですから、地獄の隣りは餓鬼道かというと、そうではないと云うのです。地獄の隣りは極楽であると、地獄と極楽は紙一重であると、こう云うのです。何故でしょうか。



――― 桑原啓善 著『人類の最大犯罪は戦争』P103-104 より










2017/09/12

今日の言葉


もうけつしてさびしくはない
なんべんさびしくないと云つたとこで
またさびしくなるのはきまつてゐる
けれどもここはこれでいいのだ
すべてさびしさと悲傷とを焚いて
ひとは透明な軌道をすすむ



―――宮沢賢治 
    (『春と修羅』 小岩井農場パート九 より)